ろまんくらぶ「仮面の天使」7
亜紀はなるべくさりげなくしていた。健の経営しているスタジオに面接を受けて潜り込み一緒に働くようになった。チャンスはいくらでもある。いつも周囲にいながら、彼の隙をうかがっていた。わざと他にボーイフレンドを作り、スタジオに迎えに来させたりして、気づかれないように色々と手を回していた。亜紀は観察を続け、そのうちに、健が遅くまで残る日を細かく把握する。「とにかく、茉莉にまず疑いを起こさせればいい」と思っていた。「あんなトロそうな女、私の敵ではない」などと亜紀は考えていた。
週末には健は茉莉をよくスタジオに呼ぶ。それを知った亜紀は、その日も遅くまでわざと残っていた。
「それ、終わんないのかな?」
「あ、はい。もう少し」
「あんまり、遅くなりそうなら先に帰ってもいいよ」
「はい。でも、やりかけなので」
茉莉と2人きりになりたいのか、健は亜紀を帰そうとする。彼の目には亜紀は仕事熱心な、ごくさっぱりとした女性としか見えなかった。それなりに仕事は出来るので、大切なことも任せるようになった。
そうやって、亜紀と健は9時をまわる頃まで仕事を続けていた。他のスタッフがいなくなり、そこへ茉莉がやって来る。差し入れを持って、何も知らずに近付いてくる。
「お疲れさま。お腹空いてない?」
「あ、助かる。わるい、もう少ししたら終わるから」
気をきかせて茉莉はお茶をいれに行く。亜紀は手伝いには行かず、わざと健の後ろへとまわる。スタジオの外からは中が見えている。茉莉はお茶を持って戻ってくる。亜紀はそれを認めると
「あ、ゴミですよ」
と言って、わざと茉莉に見えるように健の髪に触れる。手の動きが茉莉からはっきりわかるようにする。茉莉はそれを注視する羽目に陥る。彼女の目は亜紀の指先に釘付けになる。そんなことには健は気づかない。亜紀は茉莉にしっかりと見られたことを確認すると、今度はわざと、「あ、見られちゃった」という感じの仕草をする。
茉莉は、何かいけないものを見てしまったと思い込む。
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