ろまんくらぶ「仮面の天使」2

ただそれは最初、茉莉がまだ深く意識するようなものでもない淡い恋だった。

健への強い気持ちは家族と一緒にパリに遊びに行った時に突然起きる。彼女の様子は傍目から見てもわかるほどであり、彼女の父は慌てるが、母は知らんぷりを決め込む。健の両親はあまり口出しはしなかった。それがしまいには茉莉が留学をしたいと言い出し、さすがにその時は彼女の母も困ってしまった。

当の健は茉莉と数歳も年齢が違うため、最初は兄のような気持ちしか持てなかった。茉莉の母は健の母から、息子の性格を聞かされていた。そんなにいつも優しいわけではなく、好き嫌いははっきりしていて、どうやら茉莉の片想いで終わりそうだった。


結局、とりあえず、春に一ヶ月パリに茉莉を行かせてみることになる。でも健にはもう好きな女性がいて、その彼女を守りたいという責任感まで持っていた。

まとわりつく茉莉が妹みたいで可愛いので、初め健はそのままにしておいた。付き合っている彼女にも、幼馴染として紹介した。ただ、その内にトラブルが始まった。原因は健の彼女の前で、茉莉が頻繁に日本語だけで話すことだった。日本語がわからない健の彼女は、だんだんと疎外されたような気分になってくる。心が不安定になり、不眠を訴えるようになる。もっとフランス語で話すように言っても全く聞き分けない茉莉に対し、さすがに彼も少々苛立ちを感じ、かなりきつい言い方をして茉莉が離れていくように仕向ける。

その一方では早く茉莉から離れないと、気持ちがぐらぐらしてややこしいことになりそうだとどこかで予感していた。

「君のことは恋愛の対象として見ることはできないから」

そう告げると、とりあえず、滞在を長引かせようとする茉莉を日本へ返す。言いながら健は、どこかにかすかな嘘があることを、この時感じていた。それほどに茉莉の淡いピンク色の艶やかな唇は蠱惑的な香りを放っていた。

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