ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」96

剛はその僅かな隙間を手でこじ開けようと指先に強い力をかける。するとズズッと音を立てて壁が少しずつずれていく。こんな馬鹿なことがあるだろうか。品の良さそうな執事が案内したその先は、実際にはまるで牢獄のような隠し部屋だったのだ。調度品などのしつらえからはそうは全く思えなかった。何のための部屋?まさか秘密の口外してはいけない取引の場所?

今はもはや想像の域を出ない。力を振り絞り、剛は思いっきり壁をずらす。するとそこには別の通路が広がっている。

「急いで」

ハリス夫人を外の通路に先に出すと、彼は火の手が来ないように壁を下に戻して閉鎖する。ふと周防夫人がこの先どうなるのか、ゾッとした思いを抱く。煉獄の炎にドロドロに焼かれてしまうのだろうか。剛とハリス夫人を道連れにしようと画策していたのだろうか。

なんとなく通常の廊下に出たという直感に動かされ、微かに光のする方向へ剛と夫人は走る。あった。窓が庭へ繋がっている。外には広大な敷地。左手遠景には今日入ってきた門扉が見える。その手間にいつもゲストとして彼が招かれていた屋敷がある。そうか。いつもの屋敷とこの通路がつながり、通路の途中に隠し扉があり、隠された部屋があったのだ。そして通常使用する屋敷の影になっていて、隠された別の館は見えなかったのだ。もう後がない。業火が壁の向こうで唸り声を上げ始めている。爆発するかもしれない。

窓には鍵がかかっている。手近に何かないか。そう、ちょうど廊下に置かれていた花瓶などを載せてある、小ぶりのテーブルがある。彼は急いで花瓶を床に下ろすと、テーブルを思いっきり窓に打ち付ける。窓が壊れる大きな音がしてガラスが割れる。庭の緑に満たされた爽やかな空気が入ってくる。それから剛は体当たりして窓枠を壊す。その時に身体のあちらこちらに傷が出来ると赤い血が流れてくる。生々しい痛みが全身に広がる。

「早く。ここから庭へ出ないと」

「わかったわ」

長いスカートを鷲掴みにすると夫人は急いで窓から外へ出る。彼女に続き彼も庭へ出る。

「作品は?」

「ここに」

ハリス夫人は状況にも関わらず晴れやかな笑みを浮かべる。すすに塗れながらも二人は笑顔で走り出す。長い間の氷室から解放されているかのように一心に走り出す。


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