ろまんくらぶ「仮面の天使」1
白いレースのカーテンが風に揺れている。少女の柔らかく豊な薄茶色の髪がふわふわと輝いている。
勉強机に肘をつきながら、茉莉はシャープペンシルをブラブラとさせていた。目の前の壁にはパリの地図が貼られている。彼女の両親が出会った記念すべき街だった。ロマンチックなその出会いを、娘はぼんやりと夢想していた。
「私もこんな出会いがしてみたいな」
出会いの当時、彼女の母は夢中でパソコンを叩いていた。まだ出来て間もないミッテラン大統領の記念碑とも言われる国立図書館で、茉莉の父は長い間探していた安らぎと言われるもの、それと同時に愛の純粋さと繊細さを教えてくれるかもしれない女性と出会った。茉莉はそんな菅原家の天使として命を受け、パリでのいつかあるかもしれない、両親のようなそんな出会いを夢見ていた。弟の真二はそんなどこか心もとないところのある姉をいつもヒヤヒヤしながら見ていた。
彼女の両親はといえば、古くからの親友でもある一番親しい藤原家の息子二人の内のひとりを、いつか茉莉にと、将来が楽しみだと勝手に考えていた。藤原家の長男健は、大胆で冒険好きで、優しいがちょっとしたイケメンぶりだった。次男の守はおっとりしていた。二人とも体格は似たり寄ったりだったが、兄は弟より少し背が高くスリムだった。
というわけで藤原家と菅原家は仲が良く、茉莉は小さい時から三人の男の子に囲まれて育った。みんな同じ幼稚園に通っていて、幼馴染だった。
中学にもなると、茉莉は流石に男子とは距離が出てくる。健は高校卒業後、大学に入学し、かねてから念願のヨーロッパに留学する。フランス文学と映画とのつながりを専攻し、パリ大学へ入る。
高校生になった茉莉は、同級生の守には興味を示さず、少し離れてしまった健に淡い恋心を抱き始めていた。甘酸っぱい浪漫の始まりだった。
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