ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」31

その声は二つ。周防社長とその娘、、。剛はあの上品な仮面の裏に隠された狂気と残忍さの片鱗に触れる。彼らはなんら容赦すべき相手でもないのだ。この時、剛はそう感じた。そして、その怒鳴り声の合間に、明らかに怯えて縮み上がる社員達のひたすら謝っている掠れ声が混じっている。

「すみません、すみません。それはその、私の考えではないので。それはその、彼女の考えで」

どうやらその社員は自分のミスを他の人間になすりつけようとしている。そうされた他の社員は必死に抵抗している。

「いえ、私は関係ないです。そんなことは知りません、それは」

彼女も又スケープゴートを探しているようだ。それもそこに居ない人間にミスを転嫁しようとしている。

「用事で外出していますが、それは」

説明を聞くか聞かないかのうちに周防夫人の金切り声が響く。

「なんだっていいのよ!そんなことは!何回言ったらわかんのよ、あんた達は!余計なことはしなくていいって言ったはずよ!聞いてなかったの!?私に相談せずにふざけんじゃないわよ!勝手な考えで判断しないでちょうだい!わかってんの!?」

「は、はい!!」

「っとに」

どうやら周防夫人はストレスでも溜まっているのか、些細なミスを口実に怒鳴り続けている。まだ、奥底の怒りを吐き出し切ってはいないらしく、憤懣やるかたないといった調子で社員の謝罪を聞き入れる様子もない。状況を小耳にはさんだ剛は、これが噂に高い「日本式」の従業員操縦法かと皮肉まじりに鼻を鳴らす。こんなやり方では社員の能力を伸ばすどころではないだろう。逆に萎縮して本当のことなど口には出せまい。まるで口だけ「思ったことは何でも言っていいのだ」という革新派の仮面を被った田舎者の経営者のようだ。インターナショナルは粉飾だったのか。


こうやって仕事を続けている間に癌は確実に進行するのだ。

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