ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」9
幼い頃から、どこか冷たい世界に慣れていたせいで、セックスフレンドがいれば、それで十分だと剛は考えていた。恋愛に縁が全くなかったかというとそういう訳でもなかったが、職業上関係が煩わしくなるような状況が頻発し、長くは続かなかった。そして、自分が本当の意味で、誰も愛せないのではないかと、いつもどこかで考えていた。
「俺は冷たい人間だから」
それが、ある種の言い訳でもあり、決まり文句でもあった。いつも、他の人間との間に、上手く言い表すことの出来ない距離を感じ、それが、ますます彼をある意味で孤独にさせていた。しかし、孤独との付き合いもこう長くなると、それにも慣れてしまっていた。自分の中にある、他人との間に生じる隔たりを他の誰が感じえるのだろうと、それを理解できる人間に出会うことはないだろうと、疲れた時には、変にロマンチシズムに沈むこともないわけではなかった。その感傷を、仕事の厳しさで打ち消していた。
到着し、空港の風景が遠ざかるにつれ、自分が今どこにいるのかが一瞬つかめなくなる。無国籍な空港そのものとは別に、かってある国ではゾーンと呼ばれた空間が、まるでハンで押したかのようにどの国にも空港周辺に広がっている。ちょうど、都市がはっきりとその国の姿を、あるいは広告の文字などによってその印を取り始めるまでの場所で、それはどこか人気がなく、太い道路の脇には、いつ刈り込まれたのかわからない低木の群れが、騒音防止のために不規則に並んでいる。それがもちろん民家を覆い隠しているせいなのか、自分が通っている道と外界には恐ろしい程の隔たりがある。
そして、その道は、その国へと入るための長いトンネルを思わせる。
しかし、都市に入った瞬間に、確かに何かが違う。それは光と空気とでもいうようなものだろうか、空気の粒子の中に漂う、反射しているそれぞれの都市の人間の、まるで生命の色とでも言うべきか。そして、東京のその色を感じた途端、剛はある衝撃を受けた。
「ここは、俺がこの世界に降りた場所だ」
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