ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」92
青白い石像が黒い布に包まれているかのよう。周防夫人はその虚な瞳で剛とハリス夫人を見つめる。観念しているというより何もかも失い見えなくなってしまっている人間のそれの様だった。彼女の黒目には二人が反射しているだけなのかも知れなかった。
ふと気づいたかのように周防夫人は指差す。大理石で作られた暖炉の上にある包みを席を離れると運んでくる。それは以前、確かホームパーティーに招かれた時に、剛が見かけたことのある包みだった。
「この中に作品はあるわ」
そう告げると彼女は口の端を引き攣らせる。
「壊しておけばよかったのかも知れない」
しばらく彼女は沈黙し再び口を開く。
「私はただ、娘や親族、そして店を守りたかっただけ」
嘘とも本当ともつかない理由を付け加える。彼女の言葉は空虚で真実味に欠けている。
それから彼女は二人の前でゆっくりと包みを開ける。出てきた作品を見てハリス夫人は首を傾げてつぶやく。
「この作品ではないわ」
周防夫人は再び席を立つとその手にノミの様な工具を持ってくる。無意識に剛は片手をジャケットの下に入れ金属に触れる。
手にした工具を周防夫人は振り上げ、それがギラっと光る。
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