ろまんくらぶ「仮面の天使」82

そうは言うものの狭い研究室に茉莉と2人きりになると、教授の気持ちは揺らいでくる。何も無理して今別れることはないのではないかと悪魔がこっそりと耳打ちしてくる。彼女の甘い香りがその想いに拍車をかける。こんなに可愛い女子学生と未だ悪くない状況なのだから、健と真二が何を言おうと構わないのではないかと心がぐらつく。

またぼんやりしていたのだろう。教授の夢想を破るように茉莉が声をかける。

「ねえねえ、ほんっと今日変だよ。ぼーっとしすぎ」

「悪かったね。じゃあ、人が来るといけないから」

「はーい。じゃ、明日ね。きっとね」

「じゃ、6時に喫茶店で」

彼と彼女は行きつけの店で待ち合わせする約束をする。

茉莉が部屋を出ていくと、教授はほっとする。彼女を好きな気持ちがむくむくと頭をもたげてきて、息が詰まりそうだった。別れる約束をあの2人としたことで、心臓がどうにかなりそうだった。切ない気持ちと辛い気持ちが彼が仕事に向かうのを邪魔する。

教授の部屋を出ると茉莉は鼻歌を歌っている。今夜のクラブや明日のレストラン、2つの楽しみができて彼女はご機嫌なのだった。彼女の頭の中はできたら健とのことは保留にして考えたくないという思いでいっぱいだった。健との関係を修復する気は今はさらさらなかったから、後はどうやって彼をかわすかが当面の問題だった。とにかく夜一緒になることは避けたかった。

そんな彼女の気持ちを健はよく分かっておらず、相変わらず能天気に晩ご飯のことを考えていた。

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